第2回 みちしるべ「全日本剣道選手権大会をふり返る」

全日本剣道選手権大会をふり返る

第2回

みちしるべ

全日本剣道選手権大会をふり返る

全日本剣道連盟

会長 真砂 威

 昨年11月3日、日本武道館において「第64回全日本女子剣道選手権大会」と「第73回全日本剣道選手権大会」が合同で開催されました。

 この大会の方式は、令和2年(2020)のコロナ禍で中止と決定された女子(9月)と男子(11月)の選手権大会を翌年の令和3年3月14日、長野市真島総合スポーツアリーナにおいて同時開催で実施したことに端を発するものです。

 この長野市での大会について当時、全剣連顧問の鴨志田恵一氏(故人)は『剣窓』「剣筆」令和3年5月号で冒頭、「全日本剣道選手権大会を男女同時に同会場で開催するという案は、例年の状態から考えてもまず無理難題であり、またそれを発想する意義自体も理解しにくい。いわんや、コロナ禍の厳しい環境でそれを実施しようとすることは、奇想天外、非常識とさえ見える」と記しています。

 おそらくこれが世間一般の常識であったと思われます。ところが次に、「見事な運営進行により同時開催は大成功で終わったのである」と続くのです。

 その成功の大きな理由として、大会の開催に向け、「つば(鍔)競り合いになった場合、積極的に技を出すか積極的に解消する」と定めた『暫定的試合審判法』の制定と実施を上げています。

 そして「1回戦から全試合思い切った大技の攻防で勝負がスッキリ決まる。見苦しく後味悪い例はほとんどなかった」と評し、有効打突数の増加と試合時間の短縮により、剣道の試合そのものが進化したと賞賛しています。

 この感染対策のため制定された『暫定的試合審判法』は、予想外の方向で功を奏し、以後すべての大会において適用されることとなりました。古くから剣道試合における永遠の課題と言われていた鍔競り合い問題が『暫定的試合審判法』により、一挙に解決を見た、と言って過言ではないでしょう。

 いっぽう男女同時に開催することの懸念事項として、試合に要する時間が総じて女子の方が長く、男女の歩調が合わせにくいということが挙げられていました。しかし、この『暫定的試合審判法』は、その懸念を払拭させるものでした。

 こういった意味で奇しくもコロナ禍によって生みだされた試合審判法は剣道試合の進化をもたらしたのです。やがてこの試合審判法は世界各国で適用されることとなりました。

 そして令和6年(2024)7月、イタリア・ミラノで開催された第19回世界剣道選手権大会の終了をもって「暫定」にピリオドを打ち、全剣連『剣道試合・審判・運営要領の手引き』を『暫定的試合審判法』の内容を反映させたものに改訂し、同年9月1日から実施しています。

 また他方、男女同時開催による選手権大会は実施後、思わぬ反響がありました。とくに多くの女性から賛同の声が上がります。その理由の主なものは、女子選手権大会の試合が初めてNHKのテレビ放映されたことによるものです。また、男子と一緒に開催されることは当然、世の中の注目度も上がります。

 全日本女子剣道選手権大会として次に望まれるのは、武道の殿堂「日本武道館」での開催です。しかし日本武道館側には「剣道」への貸し出し枠は残っていません。これは現在、日本武道館で構成される「日本武道協議会」に加盟する武道は9種目ありますが、この9つの団体に対し公平に割り当て貸し出すという取り決めがあるためです。

 こういった成りゆきにより、令和6年の全日本剣道選手権大会は11月3日、「日本武道館」において男女合同で実施されることになりました。

 昨年、2回目となった男女合同の全日本選手権大会は予想を上回る盛況を博し、観客者数は1万人に迫る9,881人でした。これは近年における最高の観客者数です。この結果をもって、多くの方々の賛同を得たものと判断させていただき、更なる進化を図りつつ進めて参ります。

 「みちしるべ」は、毎回このように綴って参ります。ぜひ本誌『剣窓』をご購読ください。購読のお申し込みはこちらからお願いします。↓

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